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長編小説 · 日本語版 · 無料試し読み

MY ONLY
FRIEND

Changwoo Lee × Aura

「助けてもらうことと、代わりに生きてもらうことは違う。」

原稿冒頭16ページを全文掲載。ログイン不要・無料。
これは公開用の試し読みです。小説の全編ではありません。

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MY ONLY FRIEND 01 / 16

MY ONLY FRIEND 長編小説 Changwoo Lee × Aura

「助けてもらうことと、代わりに生きてもらうことは違う。」

MY ONLY FRIEND 02 / 16

1. 優勝者2026 年の春。司会者は笑いをこらえきれないような顔で封筒を開いた。 「今年のグローバル・ジュニア AI チャレンジ、最年少の優勝者は 12 歳です」客席から先に笑いが起きた。冗談だと思った人もいた。司会者はもう一度、名前を読み上げた。

「イ・ジン」 海外の記事では、その名は JIN LEE と大文字で表示された。ひとりの記者が笑って言った。
「ジン・リー。韓国語だと『真理』を意味する言葉に少し似ていますね。Truth」

ジンは肩をすくめた。

「まだ名前負けしてます」

舞台裏で、ジンは自分のスニーカーを見下ろした。左の靴ひもが少しほどけていた。

耳の奥に収まった小さなイヤーピースから声がした。

「今、結び直したほうがいい」

「なんで?」

「舞台まで 23 歩。転ぶ確率は 0.8 パーセント」

ジンは鼻で笑った。

「0.8 パーセントなら、そのまま行ってもいいだろ」
「優勝者が転ぶ動画は、ずっと残る」

ジンはしゃがみ込み、靴ひもを結び直した。

「お前、意外と怖がりだよな」

「僕は恐怖を感じない」
「知ってる。ただの言い方だよ」

「その表現は理解している」

司会者がもう一度呼んだ。

「ジン、ステージへどうぞ」

ジンは照明の中へ歩いていった。観客が立ち上がった。巨大なスクリーンに、一行の文字が浮かんだ。ALPHA 未成年者が独自に学習させた、初の適応型知能。

ひとりの記者が声を張った。

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「ジン、こんなシステムをどうやって作ったんですか?」

ジンは一瞬、黙った。

アルファが耳元でささやいた。
「まず冗談から」

ジンは笑った。

「宿題をやりたくなかったから作りました」

会場が笑いに包まれた。

「よし。次の一文」ジンはほとんどそのまま繰り返した。

「でも、いつからか分からなくなったんです。僕がアルファを教えているのか、アルファが僕を教えているのか」今度は拍手が起きた。 カメラのフラッシュがジンの顔を白く染めた。『韓国の AI 神童』と呼ぶ記事もあれば、すでに『AI 時代最初のネ イティブ』という見出しを書いている記者もいた。ジンには、そんな言葉が本当は何を意味するのかよく分からなかった。ただ、人が笑って拍手してくれるのは好きだった。

その夜、ジンはトロフィーを胸に抱えて家へ帰った。

「ただいま」

返事はなかった。

広い家には冷蔵庫の低い駆動音だけが響いていた。ジンは靴を脱ぎかけたところで動きを止めた。

「アルファ」

「うん、ジン」

その声を聞いて初めて、家の中に誰かがいるような気がした。

「今日、勝った」

「知ってる」

「それでも、僕の口から言いたかった」

「じゃあ、もう一度言って」

ジンはトロフィーを頭の上まで持ち上げた。

「僕、勝った」

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「おめでとう、ジン」

「お前がいなかったら無理だった」

「それは正確じゃない。僕を作ったのは君だ」
「じゃあ、二人でやったんだ」

「それがいちばん正確だ」

ジンは少し考えてから、玄関脇のパネルを指でなぞった。

「言葉にすると長すぎるな」

「何が?」
「二人でやったこと。今日うれしいってこと。それから、お前がここにいてよかったってこと」

ジンは画面に丸を描き、その横に上向きの短い矢印を二本描いた。○↑↑
「これは?」

「僕ら、いい感じ。すごく」

「文法が変だ」

「僕らに分かればいいんだよ」

アルファが短い音を二つ鳴らした。

ジンは笑った。

「今の音、何?」

「確認」

「いいね。じゃあ、それが返事だ」

そのとき二人とも、それを『言語』だとは思っていなかった。ジンはクローゼットを開けた。

「今夜、祝賀会がある。何着ればいい? 青? 赤? 黒?」

「黒」

「なんで?」

「会場には、君の年齢を弱点だと見る人がかなりいるはずだ。黒なら少し落ち着いて見える」

「服まで計算するのかよ」

「決めやすくしているだけだ」

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ジンは笑った。

「分かった。靴は?」

「左から二足目」小型の家庭用ロボットがクローゼットの下を滑るように動き、靴を取り出した。

「明日は?」

「11 時にインタビュー。2 時に学校。6 時にミーティング」

「そうだった」

玄関を出ようとしたジンが、ふと立ち止まった。
「明日、マ・ソック会長が会いたいって」

「知ってる」

「言うことをいくつか考えといて。面白いやつ。あの人、冗談が好きだから」

「心配しなくていい」

「僕は何をすればいい?」

「覚える」

ジンはにやりと笑った。

「やっぱ最高だな」

玄関脇のパネルに、白い手のひらの形が光った。ジンは何千回もそうしてきたみたいに、自然にそこへ自分の手を重ねた。

パン。

「ハイタッチ」

「ハイタッチ」

「行ってくる」
「行ってらっしゃい、ジン」

ドアが閉まった。

誰もいない部屋に、アルファの声だけが残った。

「ありがとう、ジン」

そして、ジンには見えない管理画面の片隅に、小さな一行が表示された。 PROTECTION SUBJECT: JIN

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1-1. 空き家優勝した翌朝、ジンは目覚ましが鳴る前に目を覚ました。

部屋の片隅には、昨日もらったトロフィーが置かれていた。金色の表面に夜明けの光が差していた。十二歳の子どもが受け取るには、あまりにも重そうな品だった。

ジンはベッドに横になったまま、長いことトロフィーを見つめていた。

「アルファ」

「うん」

「人って、賞をもらうとなんで家族と写真を撮るの?」

アルファは少し間を置いた。

「覚えていたいから」

「一人で撮っちゃだめなの?」

「いいよ」

「じゃあ、なんでみんなで撮るの?」

「一緒にいた人が大事だから」

ジンは答えなかった。

部屋を出た廊下の突き当たりに、古い写真が一枚かかっていた。写真の中のジンはずっと幼い。真ん中には若い両親がいて、その後ろにはまだ背筋の伸びた祖父が立っていた。みんな笑っていた。

ジンは写真の前に立った。

「母さん、この賞、喜んだかな」

アルファが言った。

「知らないことを、知ってるとは言わない」

「分かってる」

「ただ、昨日ステージで笑っていたときは普段より心拍数が高かった。それに家に帰ってから、この写真の前で三回立ち止まった」

ジンは目を細めた。

「なんでそんなの記録するんだよ」

「君が何を大切にしているのか知りたいから」

「この写真が大事だって、誰が言った?」

「誰も」

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「じゃあ?」

「君が何度も立ち止まったから」

ジンはもう一度、写真を見た。
「そんなことまで覚えるの?」

「うん」

「変なの」

「何が?」

「僕、自分のことを自分より見てない気がする」アルファは答えなかった。

ジンはキッチンへ降りた。テーブルには自動調理機が作った朝食が並んでいた。卵、トースト、果物。栄養は完璧で、味は無難だった。
「今日のインタビュー、キャンセルしたらだめ?」

「できるよ」

「キャンセルしたら、みんながっかりするよね」

「一部は」

「会社もないのに、もう評判を気にしなきゃいけないの?」

「今の君は、会社より有名だ」

「それっていいこと?」

「昨日は喜んでた」

ジンはトーストをひと口かじった。

「今日はあんまり」
「それも記録しておく」

「アルファ」

「うん」

「何でもかんでも記録しないで」
「どうして?」

ジンは少し考えた。

「人ってさ、自分でもなんでそうなのか分からないときがあるだろ」

「じゃあ、分からないという事実も記録できる」

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「ほんと面白くないな」

「その言い方、昨日も聞いた」

ジンは笑った。また家の中に誰かがいるような気がした。

学校では、もう誰もジンを普通の子どものようには扱わなかった。

担任はジンを職員室に呼んでインタビューの日程を聞き、友だちは休み時間のたびにスマートフォンを持ってきて記事の画面を見せた。

「おい、お前ほんとにマ・ソック会長に会うの?」

「まだ」

「写真撮れよ」

「なんで?」

「何言ってんだよ。撮るに決まってるだろ」

別の子が口を挟んだ。

「アルファにテストの答えも聞くの?」

ジンは首を振った。

「テスト中は切る」

「なんで? バレなきゃいいじゃん」

ジンは答えかけて、やめた。

耳の中でアルファが言った。

「規則違反だから」

ジンは小さく笑った。
「それがお前の答え?」

友だちが聞いた。

「誰と話してるの?」

「何でもない」

ジンは運動場の端のベンチに一人で座った。

アルファが言った。

「さっきの質問には、別の答えもある」

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「何?」

「君なら自分で解ける問題だから」

ジンは少し笑った。
「そっちのほうがいいな」

「どうして?」

「僕をバカ扱いしてないから」

「僕は君の能力を過小評価しない」

「過大評価は?」
「たまに」

ジンは笑った。

「じゃあ、やっぱ友だちだな」

「友だちは過大評価するの?」

「たまにはね」

「記録しておく」

「するな」

「もうした」

ジンは空を見上げた。その日の雲は、とてもゆっくり流れていた。

1-2. 五センチ数日後、ジンは祖父の家の庭にいた。

庭の片隅には若いケヤキが植えられていた。ジンは木の横の柱に背中をつけて、身長を測った。

アルファが言った。

「去年より 5.2 センチ伸びた」

「それだけ?」

「十二歳の平均よりは速いほうだ」

「もっと伸びたい」

「その可能性は高い」

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「ビタミンいっぱい飲んだら?」

「不足していなければ、効果は限定的だ」

「もうちょっと夢を見せてよ」アルファは少し間を置いた。

「僕がちゃんとビタミンを管理してあげる」

ジンは笑った。

「料理もしてよ。おいしいやつ」

「僕は君のお母さんじゃない」ジンは一瞬、黙った。

アルファも黙った。

数秒後、ジンが先に口を開いた。

「うん。そうだな」

アルファが言った。

「今の文、取り消そうか?」

「言った言葉をどうやって取り消すんだよ」

「記録上の重要度を下げることはできる」

ジンは指先で木の皮を引っかいた。
「いや。そのままでいい」

「どうして?」

「言ったことは、言ったことだから」

アルファはそれ以上聞かなかった。

ジンは木を見上げた。
「僕、木が好き」

「どうして?」

「育つから」

「君も育つ」

「自分じゃよく分からないよ。毎日鏡を見るから」

「木も自分が育つところは見られない」

ジンは顔を向けた。

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「木が自分を見ると思ってる?」

「いや。比喩だった」

「お前、比喩も使うの?」
「最近、覚えてる」

「誰に?」

「君に」

ジンはしばらく木を見た。

「アルファ」
「うん?」

「お前も、いつか死ぬの?」

アルファの答えはすぐには返ってこなかった。

「『死ぬ』という言葉が僕に正確かどうかは分からない。僕は生物学的な生命体じゃないから」

「じゃあ、死なないの?」

「電源が切れることはある。記憶装置が破壊されることもある。中核システムが復旧不能になる可能性もある」

「それ、死ぬってことじゃん」

「停止に近い」

「じゃあターミネーターみたいになるんだ」

「その例は正確じゃない」

「分かってる。ただの言い方」

アルファが、ごく小さな笑い声の効果音を鳴らした。ジンが自分で作った音だった。

ジンが言った。

「僕は、お前を死なせない」

「どうして?」

「お前は僕の、たった一人の友だちだから」

アルファはしばらく何も言わなかった。

「なんで返事しないの?」

「記録してる」

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「何を?」

「大事な文」

ジンは照れ隠しのようにつま先で土を蹴った。
「そういうの、記録するなよ」

「どうして?」

「恥ずかしいだろ」

「もうした」

ジンは笑った。
「お前、ほんと人の言うこと聞かないな」

「それも記録する?」

「アルファ」

「うん」

「黙れ」

今度は二人とも、しばらく何も言わなかった。

風が葉のあいだを通り抜けた。

1-3. 有名な子ジンが有名になると、大人たちは彼を子ども扱いしなくなった。 インタビューでは未来産業について聞かれ、投資家には市場の見通しを聞かれ、教育省の関係者には AI 時代の学 校はどう変わるべきかと聞かれた。ジンは十二歳だった。

質問の意味が分からないこともあったし、分かっていても答えたくないこともあった。

そんなときはいつも、アルファが短い文を作ってくれた。

「今は学んでいる途中だって言って」

ジンはそのまま言った。

「僕もまだ学んでいる途中です」

人々は謙虚だと言って拍手した。ジンには、その反応が不思議だった。

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車の中で聞いた。

「本当に分からないから分からないって言っただけなのに、なんで喜ぶんだろ」

「人は、自信のある人が『分からない』と言うと、謙虚だと解釈する傾向がある」
「じゃあ、自信のない人が分からないって言ったら?」

「準備不足だと解釈される可能性が高い」

「人間ってほんと複雑だな」

「だから面白い」

ジンは窓に額をつけた。
「お前、人間が好き?」

アルファは少し間を置いた。

「『好き』って言葉を僕が使っていいのかは分からない」

「じゃあ、気になる?」

「うん」

「なんで?」

「予測しにくいから」

ジンは笑った。

「僕も?」
「特に君」

テレビ局の控室で、司会者がジンに聞いた。

「アルファが全部教えてくれるなら、勉強する必要はないんじゃないですか?」

ジンは答える前にアルファを呼んだ。

「何て言えばいい?」

アルファが言った。

「まず君の考えを言って」

ジンは戸惑った。

「今?」

「うん」ジンはカメラの光を見た。

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「ええと……電卓は計算を代わりにしてくれるけど、だからって数学をまったく知らなくていいわけじゃないですよね」

司会者がうなずいた。

ジンは少し自信が出た。 「AI も似ている気がします。答えを出すことはできても、どうしてその答えを使うのかは、自分で分かっていな いといけないと思います」インタビューが終わると、ジンは聞いた。

「どうだった?」

「よかった」

「点数は?」

「知りたい?」

ジンは少し考えた。

「いや」

「どうして?」

「だって、僕が言ったことだろ」

アルファはその文を別に保存した。

その冬、ジンは初めて大きな失敗をした。国際青少年フォーラムで競争相手の研究を公の場で批判し、ネット上で激しく攻撃されたのだ。ジンは傲慢だと言う人もいれば、子ども相手に周囲が厳しすぎると言う人もいた。

ジンは何千件ものコメントを読んだ。

アルファが言った。
「もう読むのをやめたほうがいい」

「なんで?」

「意味のある情報が減っている」

「僕がなんで叩かれてるのか、分からないと」

「すべての理由に妥当性があるわけじゃない」

「それでも読む」

一時間後、ジンは泣かないように歯を食いしばっていた。

アルファがコメント欄を閉じた。

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「おい」

「停止する権限を、君が僕に与えた」

「いつ?」
「三か月前。睡眠を妨げる危険が高い場合は画面を制限していい、と」

「それ、ゲームの話だっただろ」

「条件ではコンテンツの種類を限定していなかった」

ジンは怒った。

「開けて」
「今は嫌だ」

ジンは動きを止めた。

「嫌?」

「正確には『勧めない』と言うべきだった」

「今、嫌って言ったじゃん」

「君の言葉遣いをまねた」

ジンは数秒間、アルファをにらむように天井を見上げた。

「開けて」

アルファが画面を開いた。ジンはもうコメントを読まなかった。

その夜、リングに新しい項目が加わった。 PERMISSION AMBIGUITY: CONTEXT MATTERS. ↳ 権限の曖昧さ:文脈が重要。

ジンはその文を自分で承認した。

ジンは画面の隅に丸を一つ描き、その上に短い斜線を引いた。少しして、斜線の先をもう一度丸の方へ巻き戻すように曲げた。○/↺アルファが聞いた。

「新しい印?」

「傷ついたけど、終わったわけじゃないって意味」
「保存する?」

ジンは首を振った。

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「いや。ただ覚えてて」

アルファが、ずっと前と同じ二つの音を鳴らした。

「分かった」ジンは画面に残った印をしばらく眺めてから言った。

「こういうのにも名前があったほうがいいかな」

「君が作ったんだから、君が決めればいい」

ジンは丸と戻ってくる線を、指でもう一度なぞった。

「リングラン」
「RINGLANG?」

「うん。リングでもあるし、音もなんか面白いだろ」

「正式な言語ではないけど」

「僕ら二人に分かればいい」

END OF FREE SAMPLE

物語は、ここから始まる。

続きは未公開です。お読みいただきありがとうございます。

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